アフリカに精神トリップできる名古屋のホテル〈30〉

  海外放浪旅行の話ばかりをつづってきたけれど、僕は日本でもいろんなところを旅した。その多くは会社員時代の出張だけど、その中でも印象的な出来事はたくさんあった。今回はそんな「日本の旅」の記憶をさぐってみたい。
  名古屋をふくむ愛知県はトヨタの影響や物質主義の見栄っ張り文化にもよるのだろうけど、消費のレベルはスポーツ用自転車販売から見ると大阪を抜いていると思う。そんなわけで会社員として売上を上げるために頻繁に名古屋に出張した時期があった。
  そんな名古屋で最も印象的だったのが、

  東山動物園の裏のホテル

  である。
  うろうろと名古屋市内を営業活動したあと、「さて今夜はどこに泊まろうか?」と千種区あたりでネグラを探していたとき、偶然見つけたのがこのホテルだ。
  古くて汚くて、連れ込み宿みたいだけど、ビジネスホテル的にも見えた。素泊まりで一泊6000円ほどだったと思う。そこはまったく東山動物園の真裏にあって部屋からは閉園した暗闇の敷地内が見わたせた。人のよさそうなオーナーの奥さんらしき人がこう言った。

  「朝はライオンの声が××××…」

  小さな声でよく聞こえなかったけど、腹も減っていたしビールも飲みたかったので、まともに話も聞かず、そそくさとシャワーをあびて、近くの居酒屋に向かった。
  そして、いい感じで酔っ払って眠りについた。

  でも、朝になって

  「ガオオオオオオ~」

  ライオンの凄まじい雄叫びで目が覚めた。続いてチンパンジーらしき

  「ホウホウホウホウ」

  さらには鳥のような

  「キャーキャーキャー」

  再びライオンが

  「ガオオオオオオ~」

  さらに

  「クイッククイッククイック」

  「ホウホウホウホウッ」

  「キーキーキーキー」

  「パオ~」

  「キッキッキッキッ」

  「ガオオオオオオ~」

  次々と奏でられる動物たちの声声声。
  二日酔い気味でモウロウとする意識を現実にセットしようとしたけど、ますますどこかへトリップしていくようだった。

  いったいオレはどこのジャングルで目を覚ましたんや!

  日本にいながらにしてタンザニアあたりの原住民の家に民泊させてもらったようなアメージングさが味わえます。
  あのホテルまだあるのかなあ。また泊まってみたいです。名古屋に行く予定のある方はチャレンジしてみてください。