燃えよハゲ選手。男の中の男はキッチュでカッコいい

 

 

フィニヨンからの系譜。バッソの若ハゲ
 僕の古い友人で、Yさんというハゲ頭の人がいる。先日久しぶりにそのYさんから連絡があった。
「ねえねえ。上阪くん。ジロ見た? いやあ。あのバッソって頭の毛かなりヤバイねえ。へへへへへへ」かなり嬉しそうな口調だった。
 Yさんは、自分がハゲているということもあって、昔から大のハゲ選手ファンなのである。Yさんは言う。「ミッシェル・ポランティエの時代からハゲ選手を応援してるけど、ツールでハゲ選手が活躍すると本当に嬉しいもんだね。中でもローラン・フィニヨンは実に素晴らしい選手だったねえ。彼のツール連覇は、世界中のハゲたちに勇気と生きる希望を与えてくれたと信じているよ。それからフィニヨンのアシストだったビャルヌ・リースを忘れちゃいけないね。ハゲ頭の上に完璧なオヤジ顔でツールに優勝しちゃったんだから。やってくれたよね。すごいよ。まったくハゲの誇りだよ。でもここ数年はパンターニを最後にハゲ選手の活躍はさっぱりだったからね。そんなわけでバッソの活躍は久しぶりに不屈のハゲ魂を燃えさせてくれそうだよ。でもダブルツールを達成するためにはもう少し毛が抜けないとダメだよなあ」だって。
 思えば、フィニヨンの元アシストだった親父ハゲのリースが現在CSCの監督で、その弟子のバッソが若ハゲを披露しながらジロで圧勝し、ツールでも優勝を目指しているとは、なんたるハゲつながりであろうか。戦術テクニックを踏まえたレースマインドはハゲとともに伝播されるものなのであろうか。うぬぬぬぬ。恐るべきハゲパワー。

 

遺憾な出来事はイカンのだ
 巷では、単にハゲている人を「ハゲラー」と呼び、耐え切れなくてカツラをつけた人を「カツラー」と呼ぶそうである。ツールではそんなスーパーハゲラーたち(まさかカツラーはいないだろね)が素晴らしい歴史を残しているにもかかわらず、世間には何気ない言葉の暴力により傷ついているハゲの方々は少なくないと聞く。
たとえば、シマノの今西コーチなどは出身高校が京都の桂高校である。ある日、誰が見てもカツラだとわかるカツラーの方から不運にも「今西さんはどちらの高校のご出身ですか?」と聞かれ、思わず「はい。カツラ・・・高校です・・・(汗)」(カツラと言った瞬間にまわりの空気が凍った)と答えてしまった。それはそれは変な雰囲気がうずまいたという。誰が悪いわけでもないのに、いやいや。まことにもってイカンな出来事である。
 そんなわけで、意味なく居心地の悪い思いをすることが多いハゲラーやカツラーの方々だけど、傷心するなかれ。社会的な立場とは別に、頭髪の薄い方には実は素晴らしい能力がそなえられているのだ。それは豊富な男性ホルモン量に関してである。

 

ハゲが持つ超人的な能力とは
 男性ホルモンが多いと、どうして頭髪が薄くなるかはよく知らない。だけど事実として感じるのは、ハゲをナメてはいけないということである。ハゲというのは男性ホルモンであるテストステロンが多量に分泌されている証明だ。そして男性ホルモンというのは強靭な筋肉を作り出す源でもある。つまりハゲの方は一般に筋肉質であり、スポーツにおいて多大なアドバンテージを有しているといえるのだ。
 というわけで男性ホルモンたっぷりのハゲ選手が自転車競技で活躍するのは、外見とのミスマッチが劇的に心を刺激するものなのだ。つまり、Yさんだけじゃなく、今はかろうじてハゲラーじゃない僕らにとっても、ハゲ選手というのは超人的でキッチュでカッコがよろしいのだ。
 今年のツール観戦ガイドブックを見ても、バッソ以外にも、ライプフェイマー、ベッティーニクリス・ホーナーなどハゲ強力選手が目白押しである。よく見るとバルベルデも凄まじい若ハゲが進行中でまことに頼もしい。
しかし、僕の大好きなウルリッヒは栗色の髪の毛がまだまだフサフサのようで、この辺りが僕的には妙に心配の種なのである。まったくTモバイルの監督がウルリッヒのシャンプーに脱毛クリームでも混ぜりゃええんじゃないかと思うのだけど。
というわけで、この号が出る頃には佳境を向かえる2006ツールの行方やいかに。ハゲ選手たちよ頑張れ。世界中のハゲラーのためだけでなく、すべての人々に感動を与えるため。

 

追記>このコラムは10年ほど前に書いたものだけど、自転車選手にとって、そして活動的な男性にとって男性ホルモンというのがいかに大事な物か53歳になった今ひしひしと感じる。最近の僕は男性更年期障害でポテンツも行動力や意欲も低テンションなのがよくわかる。治療にテストステロンの錠剤を服用すれば活力がみなぎるとか聞いた。ネットで買おうかなあ。しかし話によると男性ホルモンが活発に分泌されるとやっぱり頭がハゲやすくなるそうな。さて、どちらを選ぶか!?