大手術や病気が自転車選手を強くするわけとは。

 

大手術を経験した選手は強くなる?
思い起こせば大手術後に大活躍した選手は確かにチラホラといる。
剥奪されたとは言えL・アームストロングはガンの大手術を受けた後にツールで7回も一位の入着をしているし、同じくアメリカ人のG・レモンは猟銃で誤射されて死にかけた後、パワーアップして3回のツールを優勝している。さらにA・コンタドールも海綿状血管奇形による意識不明で開頭手術を受けた後にグランツールのすべてを制している。日本人選手でも宮澤崇史が母親に肝臓の一部を与えるという生体肝移植の手術を乗り越えた後、スーパーな活躍を披露してくれたのは記憶に新しい。
どうして手術したら自転車が速くなるの? 不思議やなあ。
それについて面白い話を聞いた。なんでも大手術では当然ながら大量の輸血が必要で、それによって半分近くの血液が新しい物に交換されることもあるという。すると普通なら除去できないはずの「血中老廃物質」が減少し、新陳代謝が若返るらしい。つまり血漿交換療法と呼ばれる、透析によって「血を洗浄する」ような効果が生まれ、その結果、手術前よりパワーアップするというのだ。
そうだったのか。早く言ってくれれば、僕も鎖骨骨折で針金を入れる手術の時、ついでに血も入れ替えてもらったのに。舞洲クリテリウムぐらいは優勝できたかもしれん。
ところが、そんな「大手術血漿交換説」の真偽を友人の医者に聞いてみると「それは都市伝説や。手術の時に輸血するのは、ほとんどが赤血球や。血漿交換にはならん。誰がそんなアホなこと言うとんねん」とのこと。お騒がせしました。
実際のところ、大手術を乗り越えた選手たちは、その苦境をバネとして復活にかけるモチベーションを培ったに違いない。鎖骨の手術程度の復活モチベーションは、たかが知れているということだ。とほほほ。

 

原虫感染症でパフォーマンスが高まるって?!
病気に感染すること自体が人間の能力を高めることだってある。たとえば、ツールで2勝をあげているC・フルームは「2010年に住血吸虫に感染してから体質が変わって調子が良くなった」と言ってる。ええ。「住血吸虫」って何? ドラキュラの親戚かいな?
他にも「トキソプラズマ症」という原虫感染症があって、こいつに罹ると「リスクを恐れない前向きな性格」に変貌するらしい。さらに、トキソプラズマに感染しているのは、なんと世界人口の三分の1にものぼるという驚くべき事実! ヨーロッパ人では実に70%が感染しているといわれている。それが自転車大国ヨーロッパの強さの秘密じゃないのか? ちなみにこのトキソプラズマ、猫科の動物から人間に感染するらしい。つまり可愛いニャンコちゃんを飼ってナデナデすれば、それで前向き人間になって、自転車も速くなるというわけだ!?

 

毒と薬は表裏一体なのだ。
自転車選手じゃないけれど、第64代内閣総理大臣の田中角栄氏は「甲状腺機能亢進症」という病気だったと言われている。この病気に罹るとアドレナリンの分泌量が異常に多くなる。その結果、頭の回転が早くなり精力的になる(人もいる)。「コンピューターつきブルドーザー」の異名を持つ角栄氏は、そんな病気のアドバンテージを持って小学校卒業の学歴ながら日本のトップに君臨したのだ。
ふむう。病気で能力が高められることはあるのだな。ちなみに僕はマラリアを患って40度の熱が4日間も続いたことがあったけど、中国人の売春婦に囲まれた幻覚を見ただけ。「エロビデオつき性具」の異名には何のアドバンテージもないのだ。はあ。
さて、手術や病気以外でも意外とプラスに働くものがある。それが放射能だ。もちろん核兵器や原発事故はトンでもないけど、微量の放射能は身体に良いという説がある。たとえば、ラドン温泉は痛風や循環器障害の治療になるし、宇宙飛行士は宇宙船内部で地上の1000倍の放射線を浴びるけど、帰還した飛行士を健康診断すると筋肉の萎縮以外はすべて出発前より良好で健康になっているのだって。
考えてみると、予防接種のワクチンだって病因物質を微量に体内に注入することで抗体を作るのだから、放射能も微量なら同じように免疫力を高める効果があるのかもしれない。
仏教用語で「毒を変じて薬と為す」というのがある。毒と薬は表裏一体ということだ。そんなわけでサイクリスト諸君! 手術や病気といった「毒」に対して自然で大らかな対峙をしよう。僕もエロビデオでたまに「毒」を出しているよ。ああ。それは「毒」じゃなくって「膿」でした。