自転車の空気抵抗と地球大気についてイロイロ考えた。

 

ボードマンいわく。エアロは自転車の前部でこそ効果がある。
イギリス人の友人が、とあるパーティーでクリス・ボードマンと会話したという。ボードマンって言ったら史上最高のTTスペシャリストである。1996年に彼がたたき出したアワーレコード、56.375kmはカンチェラーラでさえも破るのが難しい大記録だ。
そんなボードマンがどんなことを語ったかと言うと、「自転車のエアロダイナミクス形状は、後部より前部の方が効果的である」ということ。つまり、自転車の後輪やバックステーやサドル後部では空気の流れが乱気流となって渦巻くため、せっかくエアロ形状にしても整流効果が少ないと言う。そんなわけで走行抵抗だけを考えて、ディスクホイールをどちらか一方に使うとすれば、前輪にするべきだと。もちろん現実には操作性の面でディスクホイールは(特にロードTTでは)後輪のみを使うことが多いけれど、とにかく!理論的に速く走るためだけなら自転車の前半分をもっとエアロにするべきなのだ。
そう考えれば、ハンドルの根本からニョロリと顔を出しているケーブル類をステムとヘッド部に内蔵することは重要だろうし、彫りの深い外人選手はパテでもって顔の凹凸を埋めることなどもお奨めしたい。グライペルなんか顔面パテしたらキッテルに勝てるんちゃう!

 

未来にはプラズマで自転車の空気抵抗を軽減できるのだ。
ボードマンの話を聞いて考えたのは、「空気」のミステリアスさについてである。「空気」って「空っぽ」みたいな漢字なのに、そこにはけっして何もないわけじゃない。窒素とか酸素とかアルゴンやらの分子がちりばめられていて、地球のシステムと密接に連動しているはずなのだ。でも、目の前の空間を掴んでみても何も感じることができない。それがいったん自転車に乗れば実体のある抵抗として立ちはだかるから、ますます空気って不思議なもんだと思う。そんな、変てこりんな雰囲気に翻弄されているのか、自転車におけるエアロダイナミクス理論はまだまだ謎に包まれた未知の話が多い。
だいたい、ヘルメットひとつ取ってみても、カッコの良い流行のヘルメットよりも競輪のオカマヘルメットの方が空気抵抗が少ないというのも意外な話だ。
他にも、気圧と温度の関係からすると一般に高温になるほど空気抵抗値は下がるので、ロンドン五輪ではベロドロームの室温を28度に保つことにより世界記録の樹立を助けたなんて話もホンマかいなって思ってしまう。
またある説では、プラズマによるエネルギー放電で飛行機の翼の気流を変えて飛行進路を操作する実験が成功しているので、その理論を使えば自転車のフレーム自体からプラズマ放電をさせて横風の変化に対する整流効果を操作してパフォーマンスを高めることができるらしいが、SFのような理論を理解しようとするあまり、脳ミソの方が放電してアンドロメダの果てまで飛んで行っちゃいそうである。

 

自転車空気抵抗は地球大気システムが姿を変えた試練なのだ。
風洞実験の結果だけで処理できないこともたくさんある。例えば、カンチェラーラのガニ股踏みは、いったいアレでエエのかい!? もっとオカマみたいに内股で膝をスリスリ合わせながら走ったほうが空気抵抗少ないんじゃないの? でもあれは人間本位の動かしやすい筋肉出力によるパワー確保が、ガニ股が受ける風の抵抗を凌駕しているんだろうなあ。
つまり、自転車の空気抵抗って一元的には語れないほど複雑で不思議なのだ。そして空気はミステリアスだ。考えてみれば、地球の大気ってメチャメチャ特殊だ。他の惑星系では決して見られない「酸素」が20%も含まれている。これって太古のバクテリアとか植物による、生物システムが生み出した普通はありえへん物質なのだ。もちろんそれがなけりゃ僕ら死ぬ。そして大気に80%も含まれる「窒素」は僕らの筋肉の元になるアミノ酸の重要成分でもあるからして、まさに選手の躍動の基でもある。微量にしか大気に含まれない二酸化炭素も植物の光合成により炭水化物を作り出す言わば「食料の素」だ。
つまり地球大気とは、僕らの血や肉や食料が姿を変えて空中漂っているようなものなのだ。僕らの生命を循環するものが、一方で自転車を走る僕らの大きな抵抗となるんだから、なんとも不思議な因果である。そう考えれば、苦しい空気抵抗さえも、地球のガイア説的実体に集合的無意識からシンクロイドすることで完全克服することが可能じゃないの?!って、ああ。またアンドロメダ見えてきた~。