シャバダバ♪シャバダバ~「オノマトペ」で調子よく走ろう。

 

「ボイン」の語源は「ボインボインとした乳房」なのだ。
「オノマトペ」とは、日本人と結婚したアフリカ人女性の名前ではない。擬態語や擬音語のことを学術的にそういう。つまり「雨がザーザー降る」とか「気持ちがハラハラする」とか「爆発はドカーン」とか「アソコがビンビンに勃起する」とかそんな表現のことだ。
考えてみると世界にはオノマトペが溢れている。音楽では「雪~や♪こんこん」とか「ピーヒャラピーヒャラ踊るポンポコリン」なんていわゆる「スキャット」はオノマトペである。また「ボイン」と言う言葉も実は大橋巨泉が考えたオノマトペ造語で、「ボインボインとした女性の乳房」からの意味である。他にも「パチンコ」や「ブギウギ」や「ゲゲゲの鬼太郎」などオノマトペをルーツにした言葉は上げ出せばきりがない。
そもそもオノマトペというのは、人間の感じた雰囲気をそのまま音に表したものだ。どうして「ピーヒャラ」なのか? どうしてそれが「パチンコ」なのかと問われても、「このリズムと歌詞はピーヒャラって雰囲気だから」とか「パチン!と球を打ってコー!と穴に落ちてゆくからパチンコなのだ」としか言えない。それがオノマトペだ。
つまりオノマトペというのは、人間の深層心理にある事象の雰囲気を音波として具現化したものだ。そして、それこそが言語のルーツでもある。古代日本人が「アマママ(天からの水)がファラーファラー(落ちてくる)」と雰囲気で発した言葉が「雨が降る」となったのではあるまいか。知らんけど。

 

言葉よりもジェスチャーよりも「オノマトペ」でブワアア~っと指導しよう。
そんなわけで、オノマトペは言葉で伝えきれないところを伝えることができるゆえに凄いツールにもなる。例えば、効率の良いペダリングをする為に「一定ワット数で回転接線方向にベクトルを加え正確に足を動かす」なんて言われてもピンと来ないけど「ペダルはシュルシュルシュルと回せ」と言われた方が上手くペダリングできる選手もいるのではあるまいか。
阪神タイガーズに在籍した頃の新庄選手がスランプで悩んでいた時、コーチの多くは「もっと肘を引いて」なんてアドバイスをしたけれど一向に改善がなかった。そこで感覚的に生きる川籐選手が「おまえなあ。もっとガツゥゥーンとバット降らなアカンちゃうか」と助言したら次の日にホームランを打ったと。これこそがオノマトペの威力である。
そんなわけで、スポーツで選手を指導する上で、オノマトペを活用することは実に有用だ。考えてみれば、言葉だけで全てを表すことはそもそも無理なのである。僕達はそれを補うため、表情やジェスチャーや声の昂揚を交えながらコミュニケーションをとっている。オノマトペは更に理論言語で表せない領域をぶわぁぁぁと掘り下げてくれるのだ。

 

自転車では「掛け声オノマトペ」より「指導声援オノマトペ」なのだ。
スポーツにおいて選手がパフォーマンスを高めるために発する掛け声も広い意味でオノマトペである。卓球あいちゃんの「サー!」やハンマー投げの室伏選手の「んがっあ~!」とか、ブルース・リーの「アチョ~」もそうだし、ウルトラマンの「シュワッチ!」や具志堅の「ちょっちゅね~」さえもそれに当たるのではないか。
自転車競技でも果たしてレース中にオノマトペ的な掛け声などはあるまいやと考えてみた。「弱虫ペダル」を見ていると登場人物のほとんどがアタックをかける時に「うりゃあああ」とか「たああああっ~」とか言うのだけど、あれは高速レース中にベラベラとお喋りができる超人高校生たちの物語であるから、常人の僕達と分けて考えねばならぬ。実際のレースで聞こえてくるのは、風の音と時に発生する落車音ぐらいで選手は静寂を聖域として、ほとんど声を発することなくペダルを回している。どうやら自転車選手とオノマトペ的掛け声はあまり関係がないようだ。
一方で、トラック競技のタイムトライアルのスタート時にはコーチが「セイ!セイ!セィ!セィ!」とタイミングを合わせた声援を送る。つまり自転車競技においては、声援や指導など外的オノマトペが有効で必要なのだ。
日本語は欧米語に比べてオノマトペが多いと言うし、東京オリンピックに向けてJCFコーチ陣にはオノマトペを多用した効率のよい指導をお願いしたいもんである。「シュルシュルとペダルを回してドカーンとアッタクをかけたら、次はギュンギュン逃げる。最終コーナーをグアーンと駆け抜けたらゴール勝負でズコーンと優勝!ぴかぴかメダルでウッハッウハや」なんて指導したら、「コーチ。言ってることがよくわかりません。ワット数とケイデンスの指標をラインで送って下さい」って? もうええわ。