「スモールワールド現象」で、君も世界チャンピオンに勝てる!

 

友だちの友だちの6人目には全人類が網羅されている!
「世間は広いようで狭い」とは言い尽くされたフレーズだ。確かに、バーコード頭のオヤジが風俗店に行ったら娘の同級生が出てきたとか、嫁さんの元彼がホモヴァージンを捧げた相手だったとか。そんな話はよくある。
さて、世間の狭さを表す指標で「六次の隔たり理論」というのがある。これは「友だちの友だち~」と辿っていけば、6人目までには世界中の誰とでも繋がっているという理論だ。つまり、「あなたの友だちの6番目」には、カンチェラーラもバルベルデも金正恩もいるということなのだ。70億人にものぼる全人類がたったの6人でコネクションを完結するなんて、なんだか不思議な話でもある。こんな人類の複雑ネットワークを「スモールワールド現象」というらしい。
かつてタモリの番組の「世界に広げよう友だちの輪!」の「テレフォンショッキング」も芸能人の枠からはみ出して、「桜田淳子の近所の八百屋のオッサン」から「その幼馴染のヤクザ」とかに繋がったら、もっとスモールワールド現象を実感できたんじゃない?

サガンに勝った奴を負かしたら、あなたもワールドクラスだ!
さて「友だちの友だちは友だちだ」的な考えからすると、「勝者の勝者は勝者だ」ともいえる。
例えば、もし現世界チャンピオンのP・サガンが子供の頃の草レースで地元のオッサンの後塵を拝した事実があるならば、今ではフラフラのアル中になっているであろうそのオッサンを連行して無理やりレースに出場させて先着さえすれば「世界チャンプに勝った奴に勝った」という幻のヒエラルキー制覇が可能なのだ。
自分ごとなのだけど、僕はロス五輪6位のサーロウ・ロジャースと言う選手にコロラドの山岳レースで偶然にも先着している。ロジャースの戦歴は凄くて、ロス五輪で彼に負けた選手にはメキシコのラウル・アルカラ(これまた凄い選手)がいる。さて、そのアルカラは1990年のツールで後の覇者であるインデュラインに先着している。つまり僕は「ツール勝者に勝った奴に(勝った奴に)勝った」のだ!
さらに僕は、新城幸也の師匠である福島晋一が学生の頃に相談を受け助言をしたことがあるので「新城幸也は俺の弟子の弟子だ」と、かなり苦しいが言えなくもない。さらにさらに、フェイスブックでは現首相の安倍晋三氏と二人を経た友だちなのだ。
そんわけで「6次の隔たり理論」を中核とする「スモールワールド現象」を駆使すれば、ツールを制することもできるし、伝説の指導者にもなれるし、総理大臣と「友だちの友だち」であることも可能なのだ! なんか嬉しい!

 

小集団の絆はカツアゲも凌駕する。
でもよく考えてみたら、安倍首相に「僕、あなたの友だちの友だちですねん。にゃはははっ(笑)」なんて近づいても「あんた誰やねん」って言われるか、SPにスタンガンで気絶させられるのがオチである。つまり、ツール勝者に6人目で勝っても、フェイスブックで有名人と友だちになっても、それは希薄な幻の関係なのだ。もちろん「なんか嬉しい」と楽しむのは自由で、それゆえSNSは魅力のある機能だけど、もっと現実的に使えるネットワークもある。それは「絆」という奴だ。
人間というのは不思議なもので、小さな集団の繋がりをまるで魔法のように信奉している。例えば、もし東京の新宿の居酒屋で隣に座ったオッサンが偶然にも同郷ならば「あれ~。おたく天下茶屋ですか。私、玉出ですねん」と初対面なのに妙な連帯感に包まれる。
この「絆」という概念は本能に組み込まれているらしく、中学生の頃にカツアゲにあっても地域の共通の友人(番長とか)の名前が言えれば「おお。おまえ誰々のツレかい」って、見逃してもらえるという摩訶不思議な現象すらおこりえた。
そんなわけで「6次の隔たり理論」と「小集団のキズナ理論」は、どちらも大事なことで、この対照的な二つのネットワークを絡み合せながら、僕たちは世の中を構築しているのだ。そして、浅く広いネットワークが増える世の中だからこそ「絆」をもっと大事にしなければイカンのだ。
と、もっともらしいこと言いながら「恋人の恋人は恋人だ理論」なんて考えてみた。過去の恋人を辿っていけば、6人目ぐらいで真木よう子と結ばれているのかと思うと、なんか嬉しいがな~。待てよ。ということは、その間に存在する男とも結ばれちゃうってことか?ゲゲ! 希薄な幻を楽しんでます。