自転車選手としての「痛み」を考える。

 

マタズレ予防は肛門まわりの清潔化から。
自転車に乗ることは楽しいけれど、同時に付随する「痛み」というのは意外に多い。100kmを超えるライディングになると腰や首や肩、脚フトモモはもちろん、ハンドルを握る掌からシューズに接触する足先まで痛い。登り坂をフラフラと走れば酸欠や乳酸蓄積が「痛み」だし、下り坂でオナカが冷えて脱糞しかける真冬の寒さや、真夏の灼熱も「痛み」である。ちなみに人間が全力でモガいた時、筋肉に流れる電流はとても強くて、運動性快楽物質が分泌しないと気絶するほど痛いらしい。そんな痛いことずくめのスポーツに僕らは挑んでいるのだ。
さて、そんな「痛み」の中でも「マタズレ」は超級もんだ。僕もよく苦しめられた。結論から言うと、股間を清潔に保っていればマタズレは非常に起こりにくいトラブルである。つまりそれは、摩擦で出来た股間のミクロの傷にウンコやら汗の雑菌が侵入し炎症をおこしたものだからだ。
その昔、まだ世界にウォシュレットという文明の利器が存在しなかった頃、無知な僕らはケツ毛にウンコを付着させたまま果敢に股間を擦りつけ、激しいマタズレの痛みの中でレースと練習を耐えねばならなかった。
そんなわけでサイクリスト諸君。股間をキレイにしてから自転車に乗ろう。スタート前にウンコして、もしウォシュレットがない環境なら「アルコール入りウエットティッシュ」で肛門のまわり特にケツ毛をキレイにフキフキしてあげよう。これで洗浄は完璧。そしてアルコール揮発の刺激が下腹部から脳天まで突き上げてヤバイくらい気持ちいい。僕などは、レースでなくてもアルコールで肛門を拭いて遊ぶこともあるぐらいだ(汗)。

 

「痛み」や「苦しみ」も数値化できる!?
さて驚くべきことに「痛み」を数値化して表す単位がある。それを「ハナゲ」という。なんでも、1cmの鼻毛を1ニュートンの力で引き抜いた時に感じる痛みを「1ハナゲ」として基準化することで「痛みの数値化」が可能になったそうな。これは1998年スイスのダヴォス・プラッツでおこなわれた世界知覚認識学会でのこと。北海道大学医学部の斉藤信教授による提案で国際基準化が実現したとなっている。斉藤教授によると、足の小指を角にぶつけた時の痛みは「2~3キロハナゲ」。出産の痛みは通常「2.5~3.2メガハナゲ」というが、なかなか愉快な都市伝説ではある。ちなみにサブいジョークで滑った時の基準単位には「1カエレ」というのがあるらしい。
考えてみれば、現在はパワーメーターで人間の出力を数値化できるのだから、ヘマクトリット値や最大酸素摂取量と上手く連携させれば、必死のパッチになって走っている選手の苦しさを数値化できるのはずだ。とうわけで、全日本選手権TT覇者の西薗選手のパワートレーニングメニューを作成するPCGジャパンの中田尚志氏が、選手の精神的集中度を高めるため、さらに苦痛が少ない効率の良いトレーニングのため、「自転車苦痛の数値的指標」の開発に取り組んでいる。単位は「1シニソー」らしい。

 

「痛み」こそが心も身体も鍛えてくれるのだ。
そもそも、マタズレやシンドさなど痛みや苦痛というものは「生体の警告信号」である。もし痛みを感じなかったら大変だ。立ち飲みでスケベ話をして飲んでいて、いきなり川俣軍司が包丁で背中を切りつけてきたらどうなる? 痛みがあるからこそ状況を察知し逃げて助かる可能性があるのだ。
思うに、女性が性行為の初体験で痛みを感じるのも「人類の警告信号」であるかもしれない。もしそれがなかったら若い頃から皆が乱交状態ということだ。つまり「痛み」は人類の倫理観念と人口増加に大変重要な警告を与えてくれているのだ。ちなみに初めてチンコの皮を剥いたら痛いのもホトホトに同じ理由であろう。
さて「痛み」で最も重要なこと。それは「痛みは超回復を促す」ということだ。トレーニングの筋肉疲労や心肺機能の痛みは、肉体的なパフォーマンスを次の段階へ成長させてくれる。だから練習で苦しい思いをすればするほど超回復を踏まえて選手は強くなるのだ。
さて、同じことが「心の痛み」にも言える。心の痛みの超回復とは、人生で悲しく辛く苦労した経験こそが成熟した人格を創り上げるということだ。
そんなわけで「痛み」から逃げ出さず、それに向き合おう。積極的に「痛み」を受け入れることで、自転車レースも人生も自らを豊かに創造してくれるのだ。でも積極的になりすぎてムチやロウソク好きのマゾにならないように。アルコールティッシュ肛門フキフキぐらいで抑えておきましょう。